KSAL
佐々木健二建築研究所
Project

HOTEL IN TENGACHAYA

Nishinari-ku, Osaka / Hotel
西暦:2023
用途:ホテル
構造:RC造
規模:947.50m²(仮)
天下茶屋 ホテル 外観と植栽計画 佐々木健二建築研究所
天下茶屋 ホテル ロビー共用部 森禅一如をテーマにした空間
天下茶屋 ホテル 客室 インテリアデザイン
天下茶屋 ホテル テラスと植栽 都市と自然の接点
天下茶屋 ホテル 夜景 外部植栽と光の計画

Concept

「森禅一如」──自然と人が分かちがたく結びつく空間の再構築。

かつて「天神ノ森」と呼ばれたこの土地には、古来より豊かな森と湧水に支えられた文化や精神性が育まれてきました。 とりわけ室町末期には、茶人・紹鴎がこの地の水に魅せられて茶室を構え、後に千利休へと連なる侘茶の精神がここから深化したと言われています。

本計画では、こうした歴史的背景を「森=自然」「禅=おおらかさ・一如」という二つの軸で捉え直し、 訪れる人が肩の力を抜き、“素の自分”に還ることのできるホテルを目指します。

自然・素材・光・行為を媒介として、 分断ではなく連続を、装飾ではなく本質を、演出ではなく佇まいを静かに立ち上げていくことが、本計画のコアコンセプトです。

Design Approach

1. 植栽による空間の再構築

建物外周を豊かな植栽で包むことで、かつての森の記憶を現代的に再生します。 植物がもたらす光合成作用や視覚的効果により、都市の内部に静かな“呼吸”を取り戻す環境装置としての外構を計画しています。

2. 素材そのものの質感を活かす共用空間

エントランス・レストランなどの共用部では、過度な装飾を排し、 木・土・石などの素材が本来持つ“手触り”と経年変化を肯定します。 「詫び・さび」の美学を空間に落とし込み、時間を受け入れる器としての建築を目指しています。

3. 客室における「茶禅一味」の空間性

客室を単なる滞在機能ではなく、「一如=分け隔てのない場」という茶室的空間性を再解釈し、 落ち着いた寸法・光環境・素材で構成します。 外界の喧騒を断ち、心が水平になる“静の間”としてデザインしています。

4. 都市と自然の界面設計

ボリューム構成・開口計画・屋外テラス等を通じて、 周辺の低層住宅街や商店街と柔らかく接続しつつ、植栽の層が時間帯・季節によって変化を生み、 街に新しい風景を提供する建築的「場」を構築します。

Context

歴史と文化が折り重なる「天下茶屋」という場所。 天下茶屋は、かつて「天神ノ森」と呼ばれた森の聖域を起源に持ち、 茶の湯文化が根付いた特異な歴史を持つエリアです。

また西成区の内部にありながら、大阪市街地への高いアクセスと地域の日常生活が混在する、 “生活感”と“文化の深度”が共存する稀有な都市環境を形成しています。

本計画で捉えた場所性のポイント

・森の記憶と湧水文化:自然の力を源泉とした文化形成の歴史を空間として継承すること。
・茶の湯・侘茶の精神性:“引き算の美学”がこの土地の美意識に結びついていること。
・都市と生活の重層性:大都市の周縁であると同時に、地域生活者の動きが濃密な環境であること。
・静と動が交錯する立地:アクセスの良さと裏路地の静けさが共存していること。

これらの文脈を読み取り、この土地にしか生まれない“静けさ”と“おおらかさ”を、 建築として再編集するという方針のもと、プロジェクトが組み上げられています。